456名無しのAA書きさん :2018/11/13(火) 16:18:37
ベイグラントストーリー

◇映画的

リスクブレイカーのアシュレイは、カルト宗教の長であるシドニーを追い、単身レアモンデに乗り込む。
そこに教会騎士団も討伐にやって来て、三つ巴の形で物語は進んでいく。

ベイグラはかなり映画に近づいたゲームだと思う。
カット割りとか心象を伝えようと凝っていて、セリフ回しも抜群で、登場人物には存在感がある。
ムービーを豊富に使っているわけではなく、ローポリゴンでグラフィックは今からすると荒いが、それも味になっている。
もちろん映像を強化したリメイクを求める気持ちはあるのだけど、そうすると本当に映画的になると思うのだけど、
それでもPS1の性能で攻めたドットとポリゴンを駆使した映像は、教会のステンドグラス絵のような、これだから出る持ち味というか、表現に昇華されている。

そのグラフィックも、吉田明彦(オウガやFFT、ニーアなど)と言う自分の中でゲームイラストレーターとしては、最上の位置に置いている職人のもので、
その中でも抜けて良く、またこのグラフィックにも合っている。
FFTのようなチビキャラじゃやっぱり佇まいの再現は出来ていなかったし、FF12のようなCGバリバリなムダ毛とかたるみとか感じさせないツルツルな絵とも違い、
少し荒くて古くて、それでいて新しいキャラグラフィックが、空間の中に生きている。
呼吸を感じる。

また崎本仁の、時に重く、時に癒しにも及ぶ、BGMが世界への疑似体験を補強する。

この松野組とも呼ばれた精鋭スタッフの持ち味がそれぞれ発揮され、一つの物語、一つの空間を作り出している。

457名無しのAA書きさん :2018/11/13(火) 16:20:15
◇魔都レアモンデ

やはり空間です。
このゲームをやっていると、このレアモンデに、実際に潜り込んでいるような気になる。
都市は朽ちた廃墟で、そこを地下街が巡り、アンデッドや獣が跋扈して、陰鬱で暗く、緊張が漂い、それでも時にはっとする美しさや安らぎの色も見せる。
効果音がとてもリアル。音の反響や、川のせせらぎや、空間にいる感じを出している。
街も張りぼてじゃなくて、歴史があって、バックグラウンドがあって、中世ヨーロッパの城下町的で、でも魔都の暗さも内包した、素晴らしいもの。
バックグラウンドは作中では多くは語られないが、十分に匂い立つし、西洋史を少しかじっていれば通じる素養も感じる。

ストーリーによる縦軸、時。
空間による横軸、場所。
が見事に一つのゲームで融合し、調和し、重奏的にゲームプレイを奏でる。

458名無しのAA書きさん :2018/11/13(火) 16:23:12
◇でもね、癖があるのよ

ここまでべた褒めだけど、かなり悪い、とは一概には言えないのだけど、癖がある。納豆級。
まずバトルと武器に癖があって、種族値によってダメージが左右される。攻撃呪文が余り効かない。
と言うのもあって、なにも下調べもせずに進めていくと、途中から攻撃してもダメージ0とか。
ファミ通40点満点やスクエアの初心者でもRPGと言う層が手に取ると、なんだ、わけわかんねー、クソゲーってなりかねない。
なんというか、このゲームが出たのは2000年で、丁度インターネットが一般家庭に普及し始める時、2002年末に第一回Flash紅白だったかな。
つまり攻略情報を気軽にさわれる人に幅がある時期で、その点でネットに一早く注目して活動していた製作者松野の、なんだろう、思い込みと言うか、逸りみたいなのが。
やはり普通にプレイするだけでもネット情報、攻略情報は必要だし、ストーリーも掲示板での口コミとかそういうのに向いていた気がする。
早すぎたんですよね。今だからこそ、プレイして輝くというか。
にしても、とあるチェインスキルを有効活用しないと初心者には難しいし、武器の使い分けも必要になる。
それらがゲーム中でアドバイスされない、そうした遊びへの誘導が圧倒的に足りない。
インターフェイスにも問題があって、武器の付け替えがロードが入って煩わしい。
癖があるのに、一般に向けた味付けがされていないんでしょう。
パクチーどっさりの現地風味のフォーって感じ?

また周回して味が出るシステムのように思えるけど、自分はしませんでした。
パズルゲームの要素があって、それでテンポと言うかプレイ感が削がれて、そのパズルもストーリーに全く関係せずに、何だろう、歪で。妙にストレスが。


◇それでも最高峰

まー、まー、尖ってる。でも、その尖り方すらも、ベイグラントストーリ-という一つの世界を表現していると思えば、煩わしささえも重厚なそれに還元されてしまう。
パクチーは好きな人はとことん好きなもので。自分も好き。
ってこって、やっぱり一番はストーリーが素晴らしく、メッセージを投げかけ、空間が素晴らしく、世界に没入させる。
楽しいものです。

ゲームというのを商品や一般というところから少し離れて、文学的な、なんだろうゲーム体験的な、自分の人生経験的な部分で置くとしたら、
最上の席の一つにこのゲームが、同じ松野製作のタクティクスオウガと共にあるのは間違いない。



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