531名無しのAA書きさん :2019/01/22(火) 21:14:19
◇世界ラーメン紀行
ttp://www.raumen.co.jp/rahakutv/world/

世界ラーメンブームに注目が集まり始める2015年あたり。

パリ、ロンドン、ミラノ、バルセロナ、バンクーバー、ニューヨークへと、ラーメン通のおっさんたちが世界各地のラーメン店へと駆けていく。


大長編ですけど、これは店への取材がしっかりしていて「回転スシ世界一周」のテイストに近い。
考察は回転スシのようにもうちょっと濃い目だったらと思うけど、ボリューム的には一冊の本を出せるほどの質量がある。
世界と言いつつ欧米に限られるのは、先の本と同様。
アジア、ベトナムや中国や台湾の日式ラーメンは逃せないと思うんだけど、通訳とか環境とかあるんだろうな。

ボリュームが多いので、オススメのパートをまず紹介。
10弾、11弾、12弾、13弾の、特にイタリアとスペインのパートが好みです。
何よりもナレーターでここから加わったドイツのラーメンシェフによって、味への蘊蓄が濃くなってくるんですよね。特に地元ヨーロッパだけに冴える。
あと、単純におっさんたちが中心なわけで、彼もおじさん臭はするけれど、全体的に若さのようなフレッシュさが出ていて、読み味が軽快になっている。
イタリアのラーメン食べたいな。ラーメン博物館にも出店してたけれど、今はもう撤収してんだよな。
これらの地域はラーメンブームって点ではパリ、ロンドンより遅れた地域だけど、それだけに胎動感、躍動感がある。

続くカナダはゲストがちょっと薄味で、密度が減ってしまったかな?

ニューヨークはメンバーが充実していて、力も入っていて、店の個性もまたエンタメ的で、見ごたえが戻って来る。
ブームの中心となったモモフク・ヌードル・バーと一風堂NYに取材できなかったのは痛いが、それを補えるだけの旨味のある店のラインアップ。
丁度、取材時期のようなのが、ニューヨークが旬だったんだろうな。
パリに一風堂、ロンドンにラーマゲドンなどの本格的なブームが来るのは、取材のちょっと先。

532名無しのAA書きさん :2019/01/22(火) 21:20:57
全体的に食レポの仕方が良いなって思う。ホンジャマカ石塚やゴチになります以降のエンタメ色の強すぎるレポートは却って時代遅れだよね。
ニュース番組のアナウンサーの食レポもパターンが見えてしまう。youtuberでもちょっと演技が濃いのはなんかね。
その中で自然体に食べていて、ちょっと食知識を語って、自然と美味しいみたいな感想が偶に出たりする。
数多くのラーメンを食した蓄積があるから、誤魔化さなくても、味が香る。
本動画の加減は、エンタメ向きじゃないんだろうけど、とても紀行に合っている。普段着なのがいい。
あの、勿論、何時もラーメンを沢山食べている人が短期間の取材でラーメンを食べまくるわけで。そこら辺の飽きを表に出さないような、見えない努力もあるんだろうな。
ただ、慣れ過ぎている感じが、外国ではラーメンをデートにとか特別な晴れのものとか、そういう海外ならではのラーメン屋の魅惑的な部分を、随分とすり減らしているように思う。
ここはお客の声とか拾ってフォローしてるけど、なんか特別感が薄いような。


取材はがんばっている店を中心に作っているので、やっぱり各店の拘りが伺える。
傾向として日本の味を伝えたい、如何に異国の地で日本の味を再現するか、ってのが一つの方向で。
もう一つが地元のニーズに応えたい、ローカル色、自分の味を出したい的な方向。
日本人シェフと外国人シェフのインタビューが混ざり合い、一人の中にも二つの方向が重なって葛藤があって、そこらへんがドラマとしても面白い。
ラーメンブームで、この先ラーメンがどう変わるかってのが、まだ見えないのも含めて、筋書きの見えない現在での選択の面白みがある。

ただ、頑張っていない人も見たいんだよな。
なんか、あの海外スシでは、中華料理屋が一晩で寿司屋になりました的な、そういうのがアジア系で多いのだけど、彼らが安価で寿司を提供するから、寿司ブームが加速して普及した。
ラーメンは海外ではまだお高いもので、ブームが本物なら寿司のように「なんちゃってな人が沢山でて来る」だろうし、彼らが動かなければブームもそこまでだよなって。
日本だって脱サラな元サラリーマンが、現在のラーメン競争を支えていて、そこから紀行のインタビュアーにもなるドイツのラーメンシェフのようなトップ層も出てくるわけで、それもラーメンの魅力でしょ。
何よりも中華料理に近いラーメンなら、中国人の「なんちゃってスシ」とは違う方向に行く気がするような。
ような。だからなー。そこが紀行で一番知りたかったんだよなー。中国人系シェフの店が出てこないように見えるんだよなー。アジアが旅の対象になっていない不満もそこらへん。
通訳の問題もあるんだろうけど、なんだか庶民感覚に欠けている感じもした。そここそがラーメンでしょって。ハイクラスなゴチソウのままでいいのかしらって。

それにしてもラーメンバーガーって変わり種っていうよりも、かなり合理的なグルメに見えて、食べたくなってしまった。
マクドナルドとかコンビニとかで売ってくれない? ないない。

これはセカンドシーズン見たいよね。見終わった人のほとんどが、同意してくれると勝手ながら思う。
もしもラーメンがローカル化してその土地の味がより鮮明になった時に、また違う醍醐味が出る気がする。
ラーメンブームが冷めて、廃墟の中に数店だけが残ったとしても、そういうのも見てみたい。
ブームが始まった時の、ちょっと先行きがうさん臭かった時の、2015年あたりの空気も、この時だけの出汁のきいた風味があるけど。

時と地によって食が変わっていく、っていう認識。あの「ラーメンの歴史学」の理論の具体的な実践版としても自分には有意義だった。