色と性格の心理学
◇心理学というよりも生活の知恵
心理学って、やっぱり人文科学になろうと頑張っていて、だから論を展開するときに、ある程度のケーススタディはしていると思うんだ。
大学の生徒を実験に使ったり、卒論レベルでもアンケートを取ったり、脳科学っぽくネズミのラットを使ったり。
んー、自分は心理学専攻じゃないし、概説を取っただけなんで、そこまでわからんけれど。
ただ言えるのは、この本が語る内容に比べて論拠のようなものが積みあがっていないし、敢えて外している気がする。
けれど、むー、フツーの人がこういう本を手に取る時に、
心理学を勉強しようというよりも、なんか心のことを知って後押ししてもらおうという気持ちの方が大きいと思う。
そういう人にはお勧め。
余り学術ばらない、先行研究や引用をしない感じで、本論をスパスパいうのはエンタメ的な痛快なわかりやすさがあるし。
軽い文と、読ませ方の工夫があって、豊富なイラストは優しく、本の名にふさわしい素晴らしいカラーの配慮が随所になされている。
読んでいて楽しい、鮮やかな本になっている。
二、三時間あれば、すらすら読めるんじゃないんかな。
好きな色による性格分析とか、なんかもう如何にも「動物うらない」的にシンボリックに書いていて。
でも、意外と当たっているかもしれない。自分の場合は。
だから作者は真面目に心理学をこなすタイプじゃないけど、きちりと利用するセンスがある人なんだろうな。
んー、色判断の根拠はケーススタディじゃないけれど、昔からの故事や社会通念、広く認められているイメージをしっかりと摘出して、
それを元に書いているって感じがする。
色のイメージをある程度、普遍化したものを知る、ちょっと心理学用語を知って賢くなったつもりになる、とかそういう広げ方がある。
だから占いというよりも、本にある通り「おばあちゃんの知恵」的なもので、
理論としてはしっかりしていないけれど、
「〇〇の色が好きな人は、これから〇〇を実践してみては」的な即実行出来たりする、
具体性と生活臭のある、色と人の関わり合いを中心に書いているんだと思う。
本格と比べればある程度信用は落とさないといけないけれど、自分では為になる豆知識として有意義な本だった。
白いカップと青いカップ。どっちのカップで飲むと珈琲は苦いと感じる?
カバンなどのカラーバリエーション。何種類くらいあると売り上げ的に効果的?
謝罪会見には何色の服を着るのが良い?
初デートにおすすめの色の服は? NGの色は?
とか、そういうの面白くないっすか。信じていいんだかわかんないけど、フムフムってなるよ。
◇*ネタバレ 自分はこの色を選んだ。あなたは何色を選ぶ?
これは、本の途中で、色占い的な、「この色を選ぶとあなたは〇〇タイプ」っていう系統別アドバイスがある。
ここで、自分の選んだ色を書くのは紹介にしてはバイアスがかかりすぎてしまうし、なんか恥ずかしいけど。
気になる人もいると思うんで書いときます。
自分はあの「青」と「青緑」を選びました。
動物占い的に言うと「洗練されたイルカ神」「勇敢なチワワ神」「従順な柴犬神」みたい。
色を選ぶ時に、気分によって時によって変わるよって本でも言ってるけど、そりゃこんだけ暑い夏にゃ寒色系を選びたくなるわなー。
んー、でも、自分は海に惹かれるタイプなんで、海っぽい色を選んだのは、ある程度の傾向な気もするし。
分析も、マークシート式の心理テスト(仕事の適性とか測るやつ)のようなものよりも、よっぽどしっくりと馴染むものがあったりして。
なかなかに侮れんっす。
色の名前(近江 源太郎、 ネイチャープロ編集室)
色辞典(それぞれの色に写真付き)って感じ。
うん、これは文章を書いたり読んだりする時に、確実に底力を高めてくれる本。
語彙が単純に豊かになるし、その語彙も実在の写真による植物や動物、鉱物などのイメージと関連付けて頭にストックできるので。
これはどちらかと言うと写真集の趣もある。
その色に関する写真が豊富で、解説に当たる文章を読まなくても、パラパラパラーと自然とか、癒し系写真集として楽しめる。
解説も結構しっかりしていて、あまり何十行と辞書みたいには説明しないで、でもヒトコトよりも重い、
絶妙なバランスで、すっと入ってきて、為になる。
色名索引があるんで、この色ってどんな色だろう、書く時に調べたり、本を読んでいて出会った色とかがあった時に、
すんなりと辿り着けるんで、今はネットが便利だけどさ、使い勝手は良い。
手元に末永く、置いときたい本です。
色と言っても、日本古来の伝統的なちょっと古めかしい色の名前や、
海外でのイングリッシュのちょっとカッコイイというか異国の風の色の名前まで。
百色を超える色があるから、そういうの知れて嬉しい。
その知識をナイフにして料理できるか、武器に出来るか、これからの自分次第なんだろう。折に触れて何回か読まなきゃな。
そういうのは、読者を試す本だけど。
なんだっけな。
これは「色の名前」「空の名前」「宙の名前」の三部作の一つで、この本を気に入ったり、そちら側に関心のある人はどうか。
「宙の名前」がなかなかで、ゲームのキャラの名前とか、やっぱカノープスとかアルビレオとか星からとったのかなとか。
「空の名前」はちょっとネタ切れを感じたり、雲の形とかわからんけど、でも空を見たら真っ先にこの本に描かれていた雲や空の種類を連想するな。
「色の名前」は身近な草木ものっているし、色と関連付けてインプットするので印象に残りやすいんで、
外歩きやサンボやちょっと旅をするときに、見えてくる景色が楽しくなるかもしれない。
色を知るということは、モノの見方を深めることだし。
太陽も花も黄色って一つのものとして捉えるよりも、サンライズイエローとかヒマワリ色とか、そうやってみる事って大切じゃないかなって。
本当は、モノ一つ一つの色を、その時の感情というか自分や見ている人物のレンズを通した、色を、ちゃんと言葉で表現する。
ちゃんと捉える力が欲しい。
「水が詰まったレッドのスイカにパワーをもらった」とか「おめでたい紅白のカニカマにネコ喜ぶ」とか、うーん、へたっぴ。
自分のボキャブラも比喩力も、へたっぴ。
そこらへんの意識を高めてくれた本です。
難点と言えば、一行程度の色に関する文学作品からの引用があるんだけど、それが古い。
本が描かれたのが20年以上前だし、たぶんこの色は伝統的にこう使われてるよ、的な引用なんだろうけど。
源氏物語とか、そこから色を引用しても、知識の浅い自分にはその文のイメージがわかない。
物事をわかりやすくする為に引用しているんだろうけど、かえって本を難しくしているような。
それは古典の歴史的な重さを与えているけど、でも、今の自分の感覚だと、色と言うともっと現代の本やアニメやキャラから、
引いてくれた方が、わかりやすい。たぶんお子様にもそうだと思う。
そういう近現代の知識は、確かにちょっと古くなるとダサくなるけどなー。
それでもそういう感覚がある本も読んでみたいっす。
「宮崎アニメの色とか」「ヨコハマ買い出し紀行、色彩論、青の世界」とか。
いや、そういうのはこの本とは関係ないか。余談になり過ぎてしまい、すまん。
893: 名無しのAA書きさん :2018/08/15(水) 20:43:11
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| (o゚*ルリ 芝生のうちにいたの。 |
| 白くって、ふわふわしてて、マシュマロみたいだった |
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〈 ::.l´:.:.. ノ ̄`^Fニ、 tァ |
ノ :':.`ー-' ヽ-‐ .:.:.ン
`ク 、.. , :.::/
| ,ノ:: ..:. . ,、;;.: `ー-、
ww vv ノ ,ィ^.::( ̄`ヽ、;:.. ヽ、 `ヽ、y'
} | \,、) `ー-、 \
w w v `ー' ヽ,ソv w
w w vv ww v wlilv
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| 川,,゚o) なるほど |
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895: 名無しのAA書きさん :2018/08/15(水) 20:44:14
/ ∧∧ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
| (o゚*ルリ 黒い犬でね、わたしたちが通ったら、 |
| 首を上げて喉を見せて《ウォウォ、ウォーウォー》って |
| 歌うみたいな声を出したの , |
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900: 名無しのAA書きさん :2018/08/15(水) 20:47:04
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川,,゚0) / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┏( v J | ――三匹目が、――ゴム工場のところに――いたの。
| これが――アオリン
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V
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. (o゚*ルリ
と┏┳┓
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| え?
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243: 名無しのAA書きさん :2018/11/02(金) 22:14:19
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リ lコ rュ
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__,人_ __,人_ ノ_ノ_,ノノノノj。,_;ノ゚゜ノ~~゙゙;。、
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空の表情を映したような鉛色の波が、鈍重な見かけに似合わず足早に押し寄せてくる。
はるか沖から、次々と、次々と。
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244: 名無しのAA書きさん :2018/11/02(金) 22:14:50
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遠くまで岩場が広がっているようで、途中で波は砕ける。
そこからはレースのテーブル掛けを掛けたような海になる。
ただし、このテーブル掛けは、ひっきりなしに動いている。
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空、海、波の色彩のコントラストの美しさ。
鉛色の波。
ここが色の表現の中心。
「空の表情を映したような」鉛色の波
とかけることで、波の色を表現すると同時に、空の色もまた読み手に映す。
その微妙な空と海の色合いの違い。そこらへんを際立たせすぎると却ってコントラストになってしまう。
「はっきりとしたレッドに、マゼンダに近い赤が混じる」
こういうの入れると、二つの色は似ていて微妙なグラディエーしょんがあると伝えたい意図だったとしても、視覚情報としては二つの色が別々に浮かんでしまい逆効果。
これは色彩に限らずに、精緻な日常を描こうとして、ディティールばっかり並べると、かえって普段着じゃなくてごてごてになったりするような。
表現の矛盾の課題。
それを考えるとこの一文が、実に空と海の微妙なグラディエーしょんの変化を文章の形から視覚イメージへと伝ていくか、
そのさり気ない一分のセンス。
レースのテーブルかけはもちろん白をイメージする。
鉛色の波が迫ってきて、途中で砕けて、白いレースのようになる。その視覚的イメージの美しさ。
もちろん、そこは自分の野暮ったい解説のように「白」という言葉を使うと、コントラストがきつくなりすぎて微妙にグラディエーしょんが伝わらなくなる。
そこを「レースのテーブルかけ」と比喩で表現する巧みさ。
レースだから透けて見えるようなちょっとした網目も連想して、そこも鉛色と白が微妙に一体となる世界の色合いを作り出す。
もちろん、これはよどんで関係がだれたような停滞した男女のデートとその心を映した情景だからさ。
鮮やかで目に見はるように美しいわけじゃない。ドラマとか、感動! とも違う。
少しくすんだ曇った色合いの世界だよ。でも、そこをこう表現できるのが、ああ!
245: 名無しのAA書きさん :2018/11/02(金) 22:15:24
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駐車場からは数段の階段があり、海沿いの小道に下りられる。
歩を運びながら、足元を見つめる。
一段、一段。
――視線が真下に行く時には、いつも、わずかに不安になる。
フレームの下の線を境に眼鏡からはみ出た〈外〉までが見える。世界は二つに分かれてしまう。
そこを、わたしのおぼつかない足が踏んで行く。
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もちろんその世界を映し出すのは主人公の登場人物の「眼」。
そしてここで主題となる「眼鏡」は、その眼を優しくサポートするパートナーであり、世界と主人公の媒介というか仲介者的役割。
もうちょっというと、この小説で言う、北村薫のイメージする世界と、僕たち読者の目に映る世界を、鮮やかに橋渡しする、
それは実は「文章そのもの」なんだよ。色の描写も含めて。
だからこの作品の主人公の眼鏡というのは、北村薫にとっても、読者にとっても、小説における文章そのものなんだよ。
それがはっきりとここまでしっかり情景がイメージできるように文章(眼鏡)がピントが合っているために、世界がそこにあるようにイメージされる。
主人公は途中で眼鏡を壊される。それは読者にとっても穏やかな日常と思える文章そのものが壊れる。
それによる亀裂は、主人公と恋人のたるんだ恋人関係そのものにも、ひずみのようなものを生み出す。
ピントの合わない眼鏡に苦しむ主人公のように、読者もまたその歪みが、かすかに痛い。
高速道路の車内で一緒に隣り合っていて、昼食を共にした。
それでも眼鏡が壊れていることに気付かない彼氏。
と同時に、彼女はそこまで二人っきりでいるのに、彼氏は淡く影のようにしか描写されない。ほとんど描かれない。メガネの中にとらえられない。
それは眼鏡を通しても彼女の眼には彼氏が取り立てて特別なものとして映らない。関心の無さ。
彼女は彼氏が気づかないのに傷つくが、それでも未練や怨念を感じないのは、その熱の情の冷めた感じによる、
やがて消えていくだろう、もうときめかない二人の関係を描写したからなのだ。
メガネは最後には直される。かすかな痛みも消える。だが、彼氏との関係もそのまま続くのか。
彼女のメガネはそのまま世界を映し続けるのか。その先の予想ははわたしは書かない。書いたも同じだけど。そこを想像させる色使いこそ北村薫の極致。
ああー、色の話と思ってたら、キモイ信仰告白になっとる。きめーなー。ちきしょー。自分ってやつは。