15 名前:名無しのAA書きさん[sage] 投稿日:2022/07/16(土) 23:55:26
ニンテンドードリーム 2022年3月号

平林久和の「ゲーム解剖学」 P70~71

多様化するゲームのジャンル。
そもそもジャンルとは?




16 自分:名無しのAA書きさん[sage] 投稿日:2022/07/17(日) 00:10:39
〇ジャンルって何だろう?

2022年になりました。改めまして新年あけましておめでとうございます。
今年でNintendo switchが発売されてから五年目を迎えることになります。
ハードの性能やユーザーの好みをとことん知りつくしたうえで開発された、
成熟期ならではの良質なゲームがたくさん発売されることを期待してます。

ところで現在、私はとある新企画のお手伝いをしています。
開発のメンバーは「新ジャンルを生み出そう」と意気込んでいます。
ヒットしているジャンルを後追いするのではなく、今までにないものを作ろうとする姿勢が頼もしいです。

私がゲーム雑誌の編集者の頃でした。
編集部内でジャンルについて論争が起こったことがありました。
ある編集者が新作ソフトの紹介ページを「ジャンル別にまとめよう」と提案しました。
そうすれば「たとえば、ロールプレイングゲームが好きな人は掲載ページを見つけやすくて便利」と主張します。
いかにもまっとうな意見ですが、この提案に反対する人物がいました。

「ジャンルは過去にあったものを整理するためにあるのではないでしょうか?
テレビゲームはジャンルの枠を超えた発明があるからおもしろいはずです。
なので、僕ら雑誌が無条件でジャンルの概念を固定させてしまうのはおかしくないですか?」と言うのです。

この理屈をこねていた人物というのは、じつは私です(笑)。
そうなんです。
ゲーム業界に入った頃から、わたしはジャンルというものについて妙な感覚を持っていました。
便利で使ってみたい気持ちはよくわかる。
しかし、そのいっぽうで安易に使ってはいけない危険な道具かもしれない。
そんな感覚にいつも包まれていたのですね。

この複雑な感覚は何なのか?
自分なりに言語化できるようにいろいろなことを調べ、考えてきました。
今回はそんなジャンルについてのお話です。

17 自分:名無しのAA書きさん[sage] 投稿日:2022/07/17(日) 00:25:51
〇ジャンルはフランス語、ジャンルは主観

そもそもジャンルというのは何語かというとフランス語です。
genreと書きます。
種族の意味のラテン語・ゲヌス(genus)に由来するそうです。

ジャンルという言葉は、いつどのように今のような使われ方になったかというと、
書物や絵画や音楽が大量に作られるようになって分類が必要となった17世紀の頃と推定されます。

つまり、作品と認めらえるような芸術が大量生産されると分類したくなるのが人間の自然な欲求です。
この頃に「ジャンル分け」という概念が誕生しました。

ジャンルの歴史を調べていくと、ジャンルの性格についてもおのずとわかってきました。
ジャンルは使う人の主観で自由に設定されてきた経緯があります。
同じ作品が分類する人によって異なったり、2つのジャンルにまたがっていてもかまわないのです。

近年の映画を例に挙げると「タイタニック」。
豪華客船が氷山とぶつかってしまうのでパニック映画であり、
レオナルド・ディカプリオ主演の恋愛映画でもあり、
史実に基づいているので歴史映画とも言えます。

どのようにジャンル分けするかは主観による、わけですね。

ジャンルに似た言葉でカテゴリーという言葉があります。
日本語では難しい言葉を使って「範疇」と呼ばれたりしますね。
このカテゴリーというのは個人の考えが入ってはいけない。
つまり、客観的で誰からも認めてもらえる区分である必要があります。

というわけで「タイタニック」はアメリカ映画、またはハリウッド映画、あるいは長編映画とカテゴリー分けをされるのです。

18 自分:名無しのAA書きさん[sage] 投稿日:2022/07/17(日) 00:46:56
〇ジャンル名をジャンル分けしてみた

ゲームの種類を家庭用ゲーム、アーケードゲーム、スマホゲームと区分した場合。
厳密に言うと、これらはジャンル分けしたのではなくカテゴリー分けしたことになります。
どれも何の種類のハードで動くゲームなのか。
誰が聞いても納得できるように客観的に分類しているからです。

ところが、ゲームのジャンルとなると主観が炸裂します。
その時々の都合や事情によって、気ままに決められています。

誤解が生まれやすいジャンルのひとつにアドベンチャーゲームがあります。
1981年にマイクロソフトは「アドベンチャー(Adbenture)」という名のゲームを発表しました。
文字を入力すると物語が進んでいく画期的なゲームでした。
以来、文字入力によって物語が分岐するタイプのゲームはアドベンチャーゲームと呼ばれるようになりました。
Nintendo Switchのゲームで言えば「ファミコン探偵倶楽部」は典型的なアドベンチャーゲームですね。
ですが、アドベンチャーは冒険のこと。
主人公が冒険する「ゼルダの伝説」をアクションアドベンチャーと呼んではいけないのか、
というとそんなことはありません。
ジャンルは主観で決めてもいいのです。

黎明期の代表作がそのままジャンル名になっているものとして「ローグ(Rogue)」が挙げられます。
ローグのようなダンジョン生成型のゲームはローグライクと呼ばれていますよね。

ロールプレイングゲーム、パズルゲームなどはゲーム全体のことを示していますが、
ゲームの主たる要素を示すジャンル名も存在します。
主人公やアイテムを育てるから育成ゲーム、
敵との戦闘に終始し、それがゲームの中心だと感じればハックアンドスラッシュ。
略してハクスラなどという呼び名もあります。

こうして改めて見てみるとジャンルにもジャンルがあるように思えます。

題材を示す(ゴルフゲーム、テニスゲーム)
場を示す(オープンワールド、箱庭ゲーム)
物語を示す(恋愛ゲーム、ミステリーゲーム)
複数プレイヤーの関係性を示す(MOBA、MMORPG)
プレイスタイルを示す(放置ゲーム、カジュアルゲーム)
自虐的に特徴を示す(バカゲー、死にゲー)
プレイヤー視点を示す(FPS、TPS)

などが思いつきます。

これらに加えて、戦国シミュレーションゲームのような題材とゲームスタイルの組み合わせ型や、
アクションRPGやパズルアクションのような、
ジャンルを組み合わせたジャンルミックス型もあります。

そこにオンラインゲームや3Dゲームのようなカテゴリー区分も加わるとさらにややこしい。

というわけで、ジャンルをジャンル分けして整理する時期がやって来たのかもしれないなー、というお話でした。