80 自分:名無しのAA書きさん[sage] 投稿日:2020/01/28(火) 20:56:00
AAアンソロジー その4

ギコ・ノワール
ttps://web.archive.org/web/20160815172759/ttp://www.toofectarts.com/videoshelf/2001/noir/index.html

81 自分:名無しのAA書きさん[sage] 投稿日:2020/01/28(火) 20:57:10


2chAA職人の間では有名だったし、後の影響を考えれば、バイブル的な存在感がある。

自分はこの時期にAA板にはいなかったけど、連作長編という形が珍しかったのかなとか、
作風からしてもギコを、こう「逝ってよし!ギコハハ」じゃなくて、役者として使ったのも先駆者的な感じがする。

そういう歴史的文脈を抜きにしても、
作品に広がる、洋画……フランスやイタリア映画っぽいニュアンスを漂わせる、その世界観は独特だ。

作風は、ヘミングウェイのハードボイルドに通じるところがある。

善悪の価値基準などは前面に出さず、出来事をただ描写し、説明は省き、簡潔な文体だけども、
なんか深読みさせるような行間のような世界を佇ませる。

82 名前:名無しのAA書きさん[sage] 投稿日:2020/01/28(火) 20:59:53


以下 クリティカルなネタバレ込みで語ります。

第一話から非常に鋭利に物語を運ばせる。

「肉」。人というものを死体ではなくそう呼ぶ隠語の背景には、人を人として、心のあるものとしてよりも、
肉体、物体として片づけていく、そういうクールさがある。

そこを誇張するような作品(大ゴマドーンとか、長文で説明的に語ったりとか)ってあって、
それをハードボイルドとか自称するのもあるけれど、
このスタイルこそ、やっぱりハドボなんだろうな。


79 名前:ふらっとしゃーぷ ◆pJc0vNII 投稿日:02/01/24 21:34 ID:4sdLH/LO


┴┬┴┬┴┬┴┬┴┬┴┬┴:;;;,,,,,;;"'''::,,,..,,,,,
┬┴┬;;;,,,, :;;;,,,, :,;┴┬┴┬┴┬┴┬┴┬;:,,,,,,,,,,,,
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┬┴┬┴┬┴┬┴ ∧∧ ┴┬┴┬┴;:;,,''';;;;,,,
┴┬┴┬┴┬┴ 【(゚Д゚キ) :,┴┬┴┬┴┬┴
─┴─┴─┴─ ヽ|  |) ,,,,,..;;┴─┴─┴─
'''' ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |  |~ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
            し`J  ノノ

(゚Д゚キ) 『そう、Jr.は目的を果たした。あまり手際は良くなかったがな』
      (・・・・・・・・・・・・・・・・・)
(゚Д゚キ) 『今回は見せしめじゃないから穏便に、とのはずなのに奴は…』
      (・・・・・・・・・・・・・・・・・)
(゚Д゚キ) 『あぁ、肉屋には2つ追加したと伝えてくれ。うち一つは小物だと』
      (・・・・・・・・・・・・・・・・・)
(゚Д゚キ) 『それでは、金はいつもの口座に頼む』
      (・・・・・・・・・・・・・・・・・プツッ)

83 名前:名無しのAA書きさん[sage] 投稿日:2020/01/28(火) 21:00:56


殺人を前にしても動じないマスター。
普通にアクシデントとして処理して、たんたんと話し続ける。
そこに人のモラルに関しては、冷たーいものを感じながら、
ギコとマスターの関係については長い間の旧知の信頼を匂わせ、むしろ温かいものすら感じる。

この寒暖のカオス具合よ。


117 名前:ふらっとしゃーぷ ◆pJc0vNII 投稿日:02/01/25 22:23 ID:/xGkMXD2



   ・・・・・・・・・・・・・・・





               / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
               | マスター……          |
               |     いつも迷惑をかけるな |
               \_____  _____/
日 ▽ 日                  ∨
≡≡≡≡≡    ∧∧
凸 ∩ []     (,,'Д゚)
           (|<V>|ヽ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄日 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ∧∧
――――――――――――――――  (゚Д゚キ)
                           (|  |)
     ━┳━   ━┳━  ━┳━      |  |&#65374;
            ∧
  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄\
  | いつも通り の方法で   |      ∧
  |     よろしいですか? |  ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
  \_________/  あぁ、処理は任せる… |
                   \__________/

84 名前:名無しのAA書きさん[sage] 投稿日:2020/01/28(火) 21:02:07


物語の様々な謎。伏線。
その中でも最大のものが、物語内を怜悧に動き続ける主人公、ギコの動機。

こういうのは中々作れない。

一人称的な作品だったり、多くの作品は、主人公の動機は早いうちに明らかにして、
読者はそれを追いかけて共有するようにさせ、共感を持たせるように書く。
というのが一つのセオリー。
動機が謎というのは敵役だったり、なんかミステリアスな味方だったりするのだけど。

本作は三人称的に、読者は手探りなまま距離を置いて、ギコを見つめて、また見つけていく。
それが本作の魅力の一つとなっている。

これは下手な人が真似ると、思わせぶりなだけのもやもやとした作品になります(経験談 T〇Tと、

171 名前:ふらっとしゃーぷ ◆pJc0vNII 投稿日:02/01/28 22:04 ID:9xvrebvE






/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
|  奴は何のために動いている? |
\_____________/




 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
 | 金か? それとも地位か? |
 \___________/







172 名前:ふらっとしゃーぷ ◆pJc0vNII 投稿日:02/01/28 22:04 ID:9xvrebvE







/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
| 何の為に? |
\_____/


┴┬┴┬┴┬┴┬┴┬┴┬┴:;;;,,,,,;;"'''::,,,..,,,,,
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┬┴┬┴┬┴┬┴ ∧∧ ┴┬┴┬┴┬┴;:;,,''';;;;,,,,,,,
┴┬┴┬┴┬┴  (゚キ ,,) :,,.┴┬┴┬┴┬┴┬┴┬
─┴─┴─┴─   |J  |  ,,,..;;;:...::─┴─┴─┴─┴
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |   &#65374; ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                し`J  ノノ 

                   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
                   | 何の為に! |
                   \_____/


                       ==ギコ・ノワール==
                              &#65374;蕩揺 終&#65374;

85 名前:名無しのAA書きさん[sage] 投稿日:2020/01/28(火) 21:02:41


これが答えか……?
殺し屋としての矜持なのか……。

428 名前:ふらっとしゃーぷ ◆pJc0vNII 投稿日:02/03/05 10:33 ID:BnCG3+Hh

     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
      | どう、 とは……?|
     \___  ___/
           ∨

         ∧∧      :::::::::::∧∧:::::
         (,,゚Д゚)        :::('ー`*)::::::::
         |  J        、つ ::::::::::::::
         | [l_l]        |  :::::::::::::::::
         し`J         し ::::::::::::::::::::::::::::
          :::::::::::::::::::::::::    :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

                     ∧
            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
             | 今後、あなたがどう動くのか気になりまして  |
            \__________________/
        ∧
/ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
| 俺は、契約によってのみ動く    |
|  知っていたのではないのかな? |
\______________/

86 名前:名無しのAA書きさん[sage] 投稿日:2020/01/28(火) 21:03:50


いや、ちょっと待てよ……。あれはブラフか……?

477 名前:ふらっとしゃーぷ ◆pJc0vNII 投稿日:02/03/11 15:56 ID:dW+LrrRy

   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
    | それで、 どうなさるので? |
   \____  _____/
           ∨
日 ▽ 日                                     コツッ
≡≡≡≡≡  ∧∧                                 コトッ
凸 ∩ []   (,,'Д゚)
        (|<V>|ヽ     ∧∧____
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄日 ̄(キ ,,)
―――――――――― ⊂  ヽ ―――
                (   )&#65374;
     ━┳━   ━┳━  ━┳━   ━┳━
 ̄ ̄ ̄ ┻  ̄ ̄ ̄┻ ̄ ̄ ̄┻  ̄ ̄ ̄┻  ̄
                ∧
      / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
       | 踊らされた代償を、払ってもらおうかと  |
      \________________/

87 名前:名無しのAA書きさん[sage] 投稿日:2020/01/28(火) 21:04:26


なんだなんだ。

621 名前:ふらっとしゃーぷ ◆pJc0vNII 投稿日:02/04/19 21:47 ID:WAljZIgE

/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
| …誰かと思えば…… |
\_  ______/
   ∨

                   ∧∧
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   (Д゚キ)  ̄ ̄ ̄ ̄
  ∧,,∧               (|  |)
:::::::   彡_,    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   |  |&#65374; ̄ ̄ ̄ ̄
::::::::  つ7            し`J::::::::::::
::::::::::,, ,,ミ             :::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::∪
:::::::::::::::::::::::::

     ∧
/ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
| …何故、 お前がここにいる? |
\____________/

622 名前:ふらっとしゃーぷ ◆pJc0vNII 投稿日:02/04/19 21:47 ID:WAljZIgE


           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
            | 言うほどの理由があるわけではない |
           \______  ________/
                     ∨

                       ∧∧
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   (Д゚キ)  ̄ ̄
      ∧,,∧              (|  |)
  ̄ ̄ミ   彡_,  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   |  |&#65374; ̄ ̄
      ミ  つ7                し`J::::::::::::
     &#65374;,, ,,ミ             :::::::::::::::::::::::::::::
      ∪ ∪
    :::::::::::::
   ::::::::::::::::::

                      ∧
                / ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
                 | 「仕事」 で来たわけでも無いしな |
                \_____________/

88 名前:名無しのAA書きさん[sage] 投稿日:2020/01/28(火) 21:05:29


そして、終わりへとむけて、徐々に明らかになっていく、
ギコが物語を暗躍し、人を殺し続ける動機。

サスペンスだが、ある点ではミステリのタッチもあることを知る。

625 名前:ふらっとしゃーぷ ◆pJc0vNII 投稿日:02/04/19 21:49 ID:WAljZIgE









       / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
        |  ただの価値観の違いだな |
       \___________/






 

626 名前:ふらっとしゃーぷ ◆pJc0vNII 投稿日:02/04/19 21:50 ID:WAljZIgE


/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
| それならば、                   |
|  お前にとって価値のあるものとは何だ? |
\____  ____________/
        ∨

               ∧∧
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   (Д゚キ)  ̄ ̄
     ∧,,∧       (|  |)
  ̄ ̄ミ   彡  ̄ ̄ |  |&#65374; ̄ ̄
      ミ  ミゝ     し`J::::::::::::
     &#65374;,, ,,ミ     :::::::::::::::::::::::::::::
      ∪ ∪
    :::::::::::::
   ::::::::::::::::::

               ∧
         / ̄ ̄ ̄   ̄\
          | そうだな…… |
         \_____/

89 名前:名無しのAA書きさん[sage] 投稿日:2020/01/28(火) 21:06:04

611 名前:ふらっとしゃーぷ ◆pJc0vNII 投稿日:02/04/19 21:39 ID:S9DJimUQ

           ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・




               ∧∧       ∧_∧
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  (Д゚キ)  ̄ ̄ ̄ (;  д)  ̄ ̄ ̄
                  (|  |) ヾ   ⊂、llll||:||l つ
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |  |&#65374; ̄ ̄ ̄ ノ  、 ヽ  ̄ ̄ ̄
                  し`J:::::::::::::   (__,(__)
               ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::





        / ̄ ̄ ̄ ̄\
         | 殺す…? |
        \____/





 

612 名前:ふらっとしゃーぷ ◆pJc0vNII 投稿日:02/04/19 21:39 ID:S9DJimUQ

・ ・ ・ ・ ・ ・




     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
      | お前に それほどの価値があるのか? |
     \_____  _________/
               ∨

               ∧∧       ∧_∧
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  (,  ゚)  ̄ ̄ ̄ (д  ;)  ̄ ̄ ̄
                   |J |     ⊂、ll||:||lll つ
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |   &#65374; ̄ ̄ ̄ ノ  、 ヽ  ̄ ̄ ̄
                  しヽ):::::::::::::  (__,)__)
               ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

90 名前:名無しのAA書きさん[sage] 投稿日:2020/01/28(火) 21:07:14

答えは簡潔にヒトコトで!
ハードボイルド!
自分だったら、10コマくらい書いて、拡大も使って、動機をネチネチとやってただろう。
いかんね。そりゃ。

野暮ったくも自分が思うのは、ギコは怒ってたんじゃないかな。
冷たく見えても、少しずつ、静かに。
そう思って、本作を1から読み直しても、また違った読み味があります。



37 名前:ふらっとしゃーぷ ◆gEpJc0vNII 投稿日:02/11/09 22:20 ID:B1O53k7D








     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
      | 最後に一つ訊きたい ── 誰かの依頼かね?|
     \___________________/




                          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
                          | いや……私怨さ |
                          \_______/




     / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
      | そうか、ならば好い  |
     \_________/



















                           ──── パシュッ

91 自分:名無しのAA書きさん[sage] 投稿日:2020/01/28(火) 21:09:30


味わい深い作品でした。
自分も行間に託す語りは好きだけど、ここまで簡潔にシンプルに作れない。
自分はもやもやーとした中に行間を置く派なんだけど、
この作品はシンプルに骨子を見せてそこから読者の脳内に行間を浮かばせる。

最後の答えは、人によって解釈は異なるような気もするけど、
その人の答えなりのそれを置いて、また読み直しても、それに応えてくれる懐の深い作品だと思う。